江戸時代の豪商の暮らしを今に伝える貴重な文化財

国指定重要文化財 渡邉邸は、江戸時代の豪商・豪農であった渡邉家の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。渡邉邸は、酒造業や廻船業、大名貸し、新田開発などで財を成した渡邉家の居宅であり、広大な敷地と壮大な建築が特徴です。

渡邉邸の敷地は約3000坪に及び、その中心には500坪の母屋がそびえ立っています。母屋は江戸時代末期の文化14年(1817年)に再建されたもので、豪壮な梁組と吹き抜けの土間が特徴です。内部には約40室の部屋があり、風呂や便所も複数備えられています。最盛期には75人の使用人が働き、1,000ヘクタールの山林と700ヘクタールの耕地を管理していました。

母屋の屋根は、日本海側特有の「石置木羽葺屋根(いしおきこばぶきやね)」という工法で作られており、約22万枚の板と15,000個の石を使用しています。この屋根は日本最大規模を誇り、現在も囲炉裏で火を焚いて煙で燻すことで保存されています。

渡邉邸の庭園は、江戸時代中期に京都から招かれた遠州流庭師によって作庭された池泉回遊式庭園で、国の名勝に指定されています。昭和26年には庭匠田中泰阿弥によって修復され、その見事な石組はこの道の極みに達すると言われています。庭園内を散策しながら、四季折々の美しい風景を楽しむことができます。

敷地内には、米蔵、味噌蔵、金蔵、宝蔵、新土蔵、裏土蔵の6つの土蔵があり、これらも国の重要文化財に指定されています。これらの土蔵は渡邉家の繁栄を物語るものであり、当時の生活や経済活動を垣間見ることができます。