小樽の歴史とアートが融合する特別な空間

小樽芸術村は、国の重要文化財建造物および小樽市指定歴史的建造物、小樽市指定の有形文化財などの歴史的建造物を美術館施設として活用したユニークな文化施設です。小樽芸術村は「旧三井銀行小樽支店」、「旧北海道拓殖銀行小樽支店(似鳥美術館)」、「ステンドグラス美術館」、「西洋美術館」の4つの建物から構成されており、それぞれが異なる魅力を持っています。
まず、1927年に竣工した旧三井銀行小樽支店は、明治末から昭和初期にかけて「北日本随一の経済都市」と呼ばれていた小樽の繁栄を象徴する建物で、国の重要文化財に指定されています。重厚な石積みのルネサンス様式の外観と内部の美しい装飾が特徴で、建物の正面には岡山県北木島産の花崗岩を使用した5つのアーチが連なり、軒には精巧な彫刻が施されています。
館内では、かつての銀行業務を再現した展示があり、当時の雰囲気を感じることができる大理石のカウンターや豪華なステンドグラス、歴代の看板など、細部にまでこだわった展示が見どころです。
次に、1923年に竣工した旧北海道拓殖銀行小樽支店を改装した「似鳥美術館」では、日本画や洋画、木彫りなど多彩な美術品が展示されています。この建物は鉄筋コンクリート造の堅牢な構造が特徴で、銀行ホールだった2階までの吹き抜けは6本の古典的円柱が圧巻の造りです。館内では、横山大観や藤田嗣治、高村光雲などの日本画や洋画、彫刻、版画をはじめとする国内外の多彩な芸術作品を一度に楽しむことができます。
美術館の1階には、ルイス・C・ティファニーのステンドグラスギャラリーが広がり、訪れる人々を圧倒します。ティファニーは、19世紀アメリカのガラス産業を芸術の域まで高めた人物であり、その作品は虹色に輝くファヴリル・ガラスをはじめ、多彩な新技法が特徴です。特に教会用ステンドグラスは「光の絵画」と称されるほど美しく、館内に展示された作品はどれも見応えがあります。
ステンドグラス美術館では、19世紀後半から20世紀初頭にかけてイギリスで制作されたステンドグラスを展示しており、かつて教会の窓を飾っていた作品が多数収蔵されています。
美術館の建物は、1923年と1935年にそれぞれ建てられた旧高橋倉庫と旧荒田商会という二つの歴史的建造物を利用しており、かつての商業活動の中心地であった小樽の歴史を感じさせるものです。
館内に展示されているステンドグラスは、ヴィクトリア女王の統治時代からエドワード朝時代、そして第一次世界大戦に至るまでのイギリスの歴史を反映しています。特に「神とイギリスの栄光」や「最後の晩餐」などの作品は、その時代背景や宗教的な意味合いを深く感じさせるもので、これらの作品はイギリスの教会が取り壊される際に保存され、日本に渡ってきました。
美術館の見どころの一つは、その美しい光の演出です。ステンドグラスを通して差し込む光が、館内を幻想的な空間に変え、訪れる人々に感動を与えます。
最後に、西洋美術館は1925年に建てられた旧浪華倉庫を改装し、2022年4月にオープンした美術館で、19世紀後半から20世紀初頭にかけて欧米で制作されたステンドグラスやアール・ヌーヴォー、アール・デコのガラス工芸品、家具などの西洋美術品を展示しています。館内には約600点の作品が展示されており、特に注目すべきは、エミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリック、ガブリエル・アージー・ルソー、ヴィクトール・アマルリック・ワルターなど、アール・ヌーヴォーやアール・デコの巨匠たちの作品です。
美術館の建物自体も見どころの一つで、旧浪華倉庫は「木骨石造」という構造で建てられており、石造りの外壁を木造の骨組で支える独特の建築様式が特徴です。この大空間を活かして当時の家具インテリアを展示しています。