幻の名器 芦屋釜 お茶を嗜み日本を味わう~福岡県芦屋町~

芦屋釜を両手で持ち文様を見せている様子
©福岡県観光連盟

伝説の茶釜「芦屋釜」を紐解く

お茶の世界では幻の名器と呼ばれる「芦屋釜」。

福岡を代表するジャパンクオリティを今回は皆さんにお届けします。

お茶の美味しさをさらに引き立てるジャパンクオリティ

茶釜と茶杓が屋外に佇んでいる様子。
dronepc55さんによる写真ACからの写真

茶道では欠かせない道具、茶釜。

普段お茶の文化に触れていないと、あまり馴染みはないかもしれませんが、茶釜はお茶のお湯を沸かすために使われるのはもちろんのこと、優美な美しさそのものをじっくりと愛でることも魅力の一つとして、お茶を嗜む人々の心を惹きつけているのです。

 

芦屋釜の里の窯が展示されている館内の様子
©福岡県観光連盟

そんな茶釜の中でも逸品と呼ばれるものが、かつての筑前国芦谷津金屋(現在の福岡県遠野群芦屋町中ノ浜付近)でつくられていた「芦屋釜」です。

芦屋釜とはこの地域で作られた茶釜の総称であり、国の重要文化財に指定されている9点の茶釜のうち、実に8点をこの芦屋釜がしめています。

幻の名器という異名も持つ芦屋釜に隠された、ジャパンクオリティを探っていきましょう。

歴史深い芦屋釜が織りなす魅力

水色の着物を着た女性が畳の茶室に座ってお茶を点てている様子
フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

芦屋釜がつくられたのは、14世紀半ばごろの南北朝時代。

一般的な茶釜の産地は千利休が活躍する桃山時代後に発展していますが、芦屋釜はそれ以前にすでに確固たる地位を築いていたことから、歴史深い茶釜としても茶道経験者の中ではよく知られています。

 

芦屋釜を両手で持ち文様を見せている様子
©福岡県観光連盟

名器と呼ばれるものの条件として見た目に重厚感があり、手取りは軽やかであるということが挙げられます。

もちろん芦屋釜は言うまでもなくその2つを兼ね備えています。

また、芦屋釜が南北朝時代の高貴な人々の心を掴んだのは、それだけでなく「真形(しんなり)」と呼ばれる端正な形。他にはない曲線美。そして銅部に表される優美な文様の数々でした。

 

雪舟秋冬山水図のうち秋景(東京国立博物館)
雪舟秋冬山水図のうち秋景(東京国立博物館)

地紋には、松竹梅・花鳥・山水などが描かれていますが、これは芦屋釜づくりを支援していた戦国大名大内氏が当時庇護していた雪舟の水墨画に影響があるといわれています。

実際釜の中には、雪舟が下絵を描いたとされるものも存在しているのです。

このように日本芸術の美しさを凝縮したものが、芦屋釜と言っても過言ではないでしょう。

突然の滅亡と復興までの道のり

畳の上に黒いお盆に乗った有抹茶とお菓子がある様子
©福岡県観光連盟

そんなお茶の世界ではその名を知らない人がいなかった芦屋釜ですが、江戸の初期に、今まで後ろ盾となっていた戦国大名の大内氏が陶晴賢に滅ぼされたことにより、250年の歴史に突如終止符が打たれます。

その後も日本中で多くの職人が同じものをつくろうと試行錯誤を繰り返しましたが、誰もなかなか復元することはできませんでした。

 

芦屋釜の里の外観
©福岡県観光連盟

芦屋釜の特徴である薄くて重厚感があるというつくりが特に復元のキーポイントになり、職人たちの頭を悩ませました。

また、芦屋釜は現在の鉄ではなく、和銑(わずく)と呼ばれる砂鉄から作った鉄を使用していたので、さらに難易度が高くなっていたのです。

しかし和銑には、500年から600年は錆びずに美しさを保てるという利点があり、この技術をもう一度復活させたい!という人々の思いで、芦屋町が町をあげて職人を育成するプロジェクトが滅亡から400年後の平成についにスタートしました。

 

芦屋釜の里にある茶室に女性が一人座り抹茶を飲んでいる写真
©福岡県観光連盟

その拠点となっているのが、芦屋釜の里です。

当初はこの技術を復活させるのに50年はかかると言われていましたが、人々の熱意と職人の努力は予想をはるかに超え、ほぼ当時の芦屋釜に近しいものが現在では復元されています。

芦屋釜の里では、芦屋釜の展示や茶室を利用することもできるので、芦屋町の人々の思いが詰まったジャパンクオリティの茶釜をぜひその目で見てみてください。

 

芦屋釜の里

住所:福岡県遠賀郡芦屋町大字山鹿1558-3
TEL: 093-223-5881
開園時間:9:00~17:00
休園日:毎週月曜日(祝日にあたる場合はその翌平日)・年末年始
入園料:中学生以上200円・小学生100円・6歳未満(小学校就学前)無料
https://ashiyakankou.com/ashiyagama/

 

日本人なら知っておきたいお茶のこと

お茶の世界はとても奥深く日本人ならば一度は触れてみたいものですが、実際お茶について学ぶ機会がなかなかないのも現状です。

今回は今まで聞きたくても聞けなかったお茶についてのあれこれを少しばかりご紹介させていただきます。

茶の湯と茶道って何が違うの?

畳の茶室にお茶の道府と掛け軸が置かれている様子
茶室

 

お茶の文化に触れたことがなくても、「茶の湯」と「茶道」という言葉は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

どちらも「抹茶を点てていただく」という広い意味ではありますが、実際は大きな違いがあるということを筆者も初めて知りました。

 

千利休の肖像画

千利休

かの有名な千利休の言葉に「茶の湯とは、ただ湯をわかし茶を点てて、のむばかりなることと知るべし」というものがあります。

ここで引っかかるのは「ただ」という言葉です。

この言葉の真意は「当たり前のことを当たり前にやることの難しさを知っていてほしい」という千利休の思いが込められています。

 

狩野養信・雅信父子による模写(養信歿年にあたる弘化3年[1846年]の作)
狩野養信・雅信父子による模写(養信歿年にあたる弘化3年[1846年]の作)

いつも通りお湯を沸かし、いつも通りお茶を点て、いつも通りそれを飲むということを継続することが茶の湯であるとともに、いつも通りということの繰り返しがどれだけ難しいことかというところに茶の湯の奥深さを感じられるのです。

茶の湯とは、つまり、茶を点てる行為そのものを指しています。

 

両手に綺麗に点てられた緑色の抹茶が入ったお茶碗を持っている様子
参照:ODAN

一方、茶道は「道」という文字が入っていることから、娯楽としてではなく、宗教の根本的な考え方に通じ、人間として向上していくための修行であるという意味を表しているようです。

人の心を養い、価値のある人間として精神面で鍛えていく様は、日本の伝統的な武道や華道や書道など「道」のつく伝統文化に共通していることがわかります。

知られざる抹茶にある効果

抹茶のティラミスのようなホールケーキが木の板の上に載っていて茶筅もそこに置かれている
参照:ODAN

今や海外でも「Matcha」として親しまれている「抹茶」。

茶の湯、そして茶道もこの抹茶があってこそ、成り立っています。

そして現代では抹茶を使ったお菓子や飲み物も増え、より身近な存在として人々の生活に根付いているのではないでしょうか。

そんな抹茶はただ美味しいだけでなく、美容や健康にいい要素がたっぷり詰まっていたのです。

 

茶碗に入った抹茶と白い和菓子が並んでいる様子
参照:ODAN

たとえば、抹茶に含まれるテアニンにはリラックス効果があり、睡眠改善や集中力アップも期待できます。

また、美肌やダイエットにも効果的な栄養成分が多く含まれているので、特に女性は必見です。

1点注意したいのはカフェイン。

寝る前に飲むのはお勧めしませんが、ほっと一息いれたい時に抹茶を楽しめば心も体も癒されるはずです。

 

景観とともにお茶を楽しむ

最後にお茶を飲みながら、美しい景色も楽しめる全国のおすすめスポットをご紹介します。

鎌倉 報国寺

青々とした竹がまっすぐに空に伸びている竹藪の様子。光が差し込んでいる。
参照:ODAN

ミシュラン・グリーンガイドでも三ツ星を獲得している報国寺。

筆者もストレスがたまった際は癒されに必ず訪れる場所です。

こちらでは美しい竹の庭を眺めながら、美味しい抹茶を頂けます。

鎌倉の着物レンタルを利用して和の装いを楽しみながら、日本の心を味わうのはいかがでしょうか。

 

報国寺

住所:鎌倉市浄明寺2丁目7番4号
TEL:0467-22-0762
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:300円
https://houkokuji.or.jp/

 

京都の鴨川で抹茶ピクニック

青空の下鴨川の河川敷と箸が見える様子
ゲタゲタさんによる写真ACからの写真

京都と言えば、様々な場所で美味しい抹茶を味わえますが、今回はその中でも一風変わった「抹茶ピクニック」を紹介します。

京都でお茶を生産するD-matchaの2号店にあるテイクアウトメニュー「野点ピクニックセット」です。

抹茶を楽しむために必要な茶筅やお湯、茶碗などが揃ったセットが貸し出されます。

抹茶を点てたことのない初心者の方にも、スタッフが点て方をレクチャーしてくださるようです。

鴨川を独り占めしながら、自分で点てたお茶を楽しむのも素敵なひと時ですね。

 

d:matcha Kyoto Cafe & Picnic出町柳店

住所:京都府京都市上京区青龍町218 グランコスモ鴨川1階
定休日:水曜日

 

お茶の時間を楽しむ

大きな茶釜に茶杓を添えている写真

Usagino Sakuさんによる写真ACからの写真

茶釜の美しさや、歴史、お茶を極める心を知ることでより一層、お茶の世界の奥深さを知り、今まで飲んでいたお茶をより美味しく感じられるのではないでしょうか。

最近では、なかなかお茶を嗜む機会が減りつつありますが、日本のおもてなしの原点を辿りながら、ゆったりとお茶を味わう時間を持ちたいものですね。

 

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Honami
大学卒業後、アパレル企業に就職するも、毎日深夜に声を枯らして帰宅する生活に疑問を感じ、幼少期を過ごしたフランスへ癒しを求め遊学。 自分よりも日本を知る外国人達との出会いで恥を知る。 帰国後はファッション専門学校で広報職を経て、現在に至る。 旅行・ビール・ファッション大好き。 関連する記事