「海人の藻塩」で本物のうま味を知る~広島県呉市蒲刈町~

ベージュ色の藻塩
momokaphotoによる写真ACからの写真

蒲刈島の「海人の藻塩」

料理には絶対に欠かせない

そんな皆さんが日常で口にしている塩を、日本の古くから伝わる製法でつくる瀬戸内の小さな島「蒲刈島」(かまがりじま)があります。

今回はこの蒲刈島のジャパンクオリティが凝縮された「藻塩」(もじお)、「海人の藻塩」(あまびとのもじお)の魅力を皆さんにご紹介します。

これぞジャパンクオリティ!古くから伝わる「藻塩」づくり

自然豊かな蒲刈町で発見 奇跡の塩

広島県蒲刈島の夕焼けの写真
写真提供:広島県 「蒲刈島の夕焼け」

瀬戸内海には数々の島が浮かび、常に美しい景色で私たちを迎えてくれます。

そんな島々のうちの一つ、「蒲刈島」をご存知ですか?

映画「海猿」のロケ地にもなり知る人ぞ知る島は現在「広島県呉市蒲刈町」となっています。

広島市内と蒲刈島を結ぶ安芸灘大橋の写真
写真提供:広島県 「安芸灘大橋」

筆者にとってもたくさんの思い出が残るこの島はかつて筆者の祖父母が住んでいて、幼い頃3人の弟たちと電車やフェリーを乗り継いで何度も訪れた懐かしい島です。

2000年に安芸灘大橋が開通してからは蒲刈島へのアクセスが大変便利になり、美しい景色を見ながらサイクリングやドライブを楽しむ人々も増えました。

広島県蒲刈町名産の海人の藻塩
筆者弟私物 「海人の藻塩」

ジャパンクオリティの記事を書き進めるにあたり、この蒲刈島の「海人の藻塩」についていつかは取り上げたいと個人的に考えていました。

なぜならこの島が生み出す「塩」は今までの塩の美味しさをはるかに超え、その歴史・技術共に世界に誇れるジャパンクオリティだと確信していたからです。

「塩が変わるだけでこんなにも料理がおいしくなるのか!」という新しい発見を皆さんにお届けしたいと思います。

「藻塩」づくりのはじまりと苦労

広島県上蒲刈の県民の浜を上空から撮影した写真
写真提供:広島県 「県民の浜」

藻塩づくりの発端は、1984年。

現在では「日本の渚百選」にも選ばれている「県民の浜」の造成工事中に古墳時代の製塩土器が発掘されたことからでした。

この土器の発見をきっかけに「藻塩の会」が発足し、本格的な研究が始まりました。

先陣を切り研究を指導したのは製塩土器の発見者であり、30年以上にわたる考古学の研究を続けてきた故松浦宜秀氏でした。(筆者の祖母曰く松浦氏とは幼馴染だったそうです)

霧の古代遺跡
画像出典:フリー素材ぱくたそ

蒲刈町一帯は瀬戸内海の温暖な気候に恵まれ、平安時代から海水を多く含んだこの地は塩田を使った製塩業が大変盛んな土地でした。

しかし実際はさらに昔古墳時代から、日本の塩づくりの原点「藻塩焼き」が存在していたことが土器の発掘によってわかったのです。

途方に暮れて頭を抱えている人の白黒写真
参照:ODAN

しかしその塩づくりに関するヒントはなかなか見つかりませんでした。

製塩土器は見つかったにもかかわらず歴史家たちに尋ねても、口をそろえて「製塩法はわからない」と答えられるばかり。

元を辿れば、塩のつくり方を教えてくれるような歴史書すら見当たらず、松浦氏は途方にくれました。

万葉集に「藻塩」のヒントが…たどり着いた日本古来の製塩方法

ホンダワラと呼ばれる玉藻が海の中にたくさん生えている様子
seama2さんによる写真ACからの写真

そんな中、『万葉集』に「藻塩」という言葉がいくつか登場していることに松浦氏は気づきました。

そしてこの和歌の中に出てくる「玉藻」という言葉から玉のついた藻=「ホンダワラ」であると導き出したのです。

ヒントとなった和歌を見てみましょう。

志摩にコバルトブルーの海と水色の空と白い砂浜が美しく輝いている様子

アニマル溝の口さんによる写真ACからの写真

「名寸隅(なきすみ)の、舟瀬ゆ見ゆる、淡路島、松帆(まつほ)の浦に、朝凪に、玉藻刈りつつ、夕凪に、藻塩焼きつつ、海人娘女、ありとは聞けど、見に行かむ、よしのなければ、ますらをの、心はなしに、手弱女の、思ひたわみて、たもとほり、我れはぞ恋ふる、舟楫をなみ」

海女の服を着た海女たちが海岸に向かって立っている様子

笑い鬼さんによる写真ACからの写真

意味は、「名寸隅(兵庫県明石市)の船舶からみえる淡路島の松帆の浦に、朝凪には玉藻を刈りとり、夕凪には藻塩を焼いている漁師の娘がいると聞く。その娘たちを見に行くすべがないので、男としての心もなく、か弱い女性のように心が折れて、おなじところを行ったりきたりしながら、私はただ恋い想っているばかり。舟も舵もないのだから。」という美しい歌に藻塩づくりのルーツが隠されていたのです。

「名寸隅」は現在の兵庫県明石市魚住町から兵庫県明石市大久保町江井島あたりまでの海岸。「松帆の浦」は現在の兵庫県淡路市岩屋松帆の周辺のことだと言われています。)

海岸に漁船が止まっている様子
makoto.hさんによる写真ACからの写真

こうして藻塩の原材料がホンダワラと瀬戸内海の海水だと判明したところから藻塩の製法が結論付けられました。

まず海水に浸したホンダワラを乾燥させ、また海水に浸し、乾燥させ…この工程を何度も行い、塩分濃度の高い「かん水」をつくります。

そしてそのかん水を土器で煮詰めて塩を採るというものでした。

この研究結果は、考古学者からも認められ、蒲刈島の藻塩づくりの礎となっていくのです。

正真正銘国産の「海人の藻塩」

塩を煮詰めている様子
画像出典:フリー素材ぱくたそ

こうして製法が導き出された藻塩は、万葉集にも記録として残されていた魚や貝を採り、藻を焼いて製塩していた「アマビト」や「アマ」と呼ばれる人々にちなんで「海人の藻塩」(あまびとのもじお)として販売されるようになりました。

製塩方法はもちろん古来のものに則り、大量生産に対応するため土器ではなく平釜を10個以上使い、火加減や時間に気を付けながら人の手で丁寧にアクをとり6~8時間煮詰めて生成していくのです。

ベージュ色の藻塩
momokaphotoによる写真ACからの写真

丹精込めてつくり上げられた「海人の藻塩」は国産のホンダワラと瀬戸内の海水が原材料となっているまさにジャパンクオリティの結晶です。

ホンダワラ特有の自然のベージュ色がそのまま塩の色になっているのも特徴の一つと言えるでしょう。

また、季節によって海水も変化していくので職人たちは常にその変化を感じ取りながら塩づくりに励んでいます。

「海人の藻塩」が合うおすすめ料理!

海人の藻塩の柚子塩味
筆者私物 「海人の藻塩 柚子塩」

「海人の藻塩」は他の塩と比べてもカルシウム・カリウム・マグネシウム・ミネラルが豊富で甘みが強く、塩特有のとがったからさが一切感じられないまろやかな口当たりです。

ここでは筆者が実家にいる頃から慣れ親しんできた「海人の藻塩」が、よりうま味を引き出してくれる料理を独断で紹介させていただきます。

「天ぷら」が藻塩でうまみアップ

野菜のてんぷらと奥にざるそばが盛ってある様子
筆者撮影

天ぷらは間違いなく藻塩と相性ばっちりです。衣のサクっとした食感も失わず、野菜が本来持っている甘みとうま味を感じさせてくれます。

「藻塩」は寿司・刺身とも相性抜群!

黒い皿に寿司が盛られ、魚をかたどった皿に醤油が盛られている様子。
筆者撮影

寿司は醤油でしょう!と思うことなかれ、特に脂ののったサーモンやエンガワ、ホタテなどとの相性抜群です。このお寿司も藻塩と醤油の二刀流で頂きました。

『藻塩』をシンプルに「おにぎり」でいただく

糊の付いたおにぎり
筆者撮影

これぞまさにシンプルイズザベスト!藻塩のうま味を一番感じられるのはおにぎりしかない!と言っても過言ではないでしょう。藻塩で握ったお米はさらに甘みが感じられます。

サラダに「藻塩」!野菜と素材の味を引き立たせる

桃と生ハムとチーズが乗ったサラダ
筆者撮影

今回は桃をいれたサラダにオリーブオイルと藻塩、バルサミコ酢、コショウで味付けしましたが、これからの時期はイチジクやオレンジを使うのもおすすめです。

果物の爽やかな甘みが一層藻塩によって引き立つでしょう。

サーモンをオーブンの天板に乗せ、塩やハーブをかけている様子
参照:ODAN

他にもお肉料理や魚料理などなど。藻塩の可能性は無限大です。

ご自身に合った藻塩の味わい方をぜひ見つけてみてください。

海人の藻塩の生まれ故郷 広島県「蒲刈島」をもっと知ろう

呉市下蒲刈から瀬戸内海と橋を眺望
写真提供:広島県 「呉市下蒲刈から瀬戸内海と橋を眺望」

広島県呉市蒲刈町通称蒲刈島の島内は、下蒲刈と上蒲刈の地域で分けられています。

藻塩づくりの施設や県民の浜があるのが上蒲刈、安芸灘大橋を渡ってすぐの地域が下蒲刈です。

その歴史は古く神后天皇がこの島に立ち寄った際、櫛を落とし、その櫛を探すのに一面に生えている蒲を刈ったという昔話から「蒲刈」という名が付いたと言われています。

上蒲刈の魅力

海に浮かぶ上蒲刈の様子
写真提供:広島県 「上蒲刈」

筆者の祖父母が育ったのは上蒲刈です。

上蒲刈は、みかん畑が数多くあり、スモモの生産量でも全国で有数の場所として知られています。

広島県上蒲刈のみかん畑
写真提供:広島県 「恵みの丘」

筆者も弟たちを引き連れながら、祖父のトラックの荷台に乗り(今では危ないので決してマネしないでほしいのですが...)みかんの収穫の手伝いをしていました。

ミカン農家の人々は、顔を合わせれば自然と世間話に花が咲きのどかな空気と潮風で思いっきりリフレッシュできるのが上蒲刈の魅力です。

広島県上蒲刈の恵みの丘の様子
写真提供:広島県 「恵みの丘」

また、県民の浜の海水浴場は都会の海とは比べ物にならないくらい美しく水も冷たいので、ぜひ夏休みを利用して海水浴に出かけるのもおすすめします。

ほかにも天体観測施設や宿泊施設、テニスコートなども揃っているので大人も子供も楽しめるスポットです。

県民の浜

住所 :広島県呉市蒲刈町大浦7605
TEL :0823-66-1177
WEB:広島県 県民の浜

下蒲刈の魅力

広島県上蒲刈の朝鮮通信使再現行列
写真提供:広島県 「朝鮮通信使再現行列」

今度は下蒲刈を探索してみましょう。

下蒲刈は、自然とレジャーの上蒲刈とはまた違った表情を見せてくれる場所です。

かつて瀬戸内海の交流の重要拠点として栄え、朝鮮通信使や西国大名の寄港地として発展してきました。

そのため、歴史や文化的な施設も多く、アートのまちとしても知られています。

広島県下蒲刈の博物館「松濤園」
写真提供:広島県 「松濤園」

まず足を運んでいただきたいのは「松濤園」です。

美しい庭園と日本の建築技術の美しさを体感できるだけでなく、4つの建物それぞれに貴重なコレクションが展示されている博物館です。

中でも、2017年ユネスコの「世界の記憶」にも認定された世界的に価値の高い『朝鮮人来朝覚備前馳走船行烈図』は古くから日韓の交流が友好的に行われ、文化が根付いていったことがわかる貴重な史料として必見です。

松濤園

住所:広島県呉市下蒲刈町下島2361番地の7
TEL:0823-65-2029

開館時間:9:00~17:00 (入館は16:30まで)
休館日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日)
入館料:大人800円・高校生480円・小中学生320円
WEB  :松濤園

広島県下蒲刈の写真
写真提供:広島県 「下蒲刈」

また松濤園の近くにある「蘭島閣美術館」もぜひ一緒に回っていただきたい場所です。

美術館としては珍しく靴を脱いで鑑賞するため、落ち着いた雰囲気でゆったりと鑑賞することが出来ます。

館内には日本を代表する横山大観、平山郁夫などの作品が約2200点と充実しており、きっと美術が好きな人も満足していただけるのではないかと思います。

蘭島閣美術館

住所:広島県呉市下蒲刈町三之瀬200番地の1
TEL:0823-65-3066

開館時間:9:00~17:00 (入館は16:30まで)
休館日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日)
入館料:大人500円・高校生300円・小中学生200円
WEB  :蘭島閣美術館

藻塩づくりを体験!ジャパンクオリティに触れよう

海人の藻塩時に入ったタイプ

参照:海人の藻塩公式HP

最後に藻塩づくりを体験できる「古代製塩遺跡復元展示館」をご紹介します。

こちらでは、藻塩に関する展示を見学することができるほか、実際に土器で藻塩をつくりそのままお持ち帰りすることもできます。

藻塩づくりは火を扱うので、タオルと軍手は必須です。

ぜひ自分の手でつくった藻塩を深く味わってみてください。

古代製塩遺跡復元展示館

住所:広島県呉市蒲刈町大浦7646-3
TEL:0823-66-1040
入館時間:9:00 〜 16:00 (閉館時間 17:00)

WEB:古代製塩遺跡復元展示館

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ABOUT US
Honami
大学卒業後、アパレル企業に就職するも、毎日深夜に声を枯らして帰宅する生活に疑問を感じ、幼少期を過ごしたフランスへ癒しを求め遊学。 自分よりも日本を知る外国人達との出会いで恥を知る。 帰国後はファッション専門学校で広報職を経て、現在に至る。 旅行・ビール・ファッション大好き。 関連する記事