常陸野ネストビール 茨城から世界に羽ばたくクラフトビール~茨城県那珂市~

中心に茶色の背景に白字で常陸野ネストビールの文字。左は酒造の入り口。右は瓶に入った湘常陸野ネストビールが置かれている。

茨城県那珂市に広がる静寂な町には、意外にも多くの日本人が知らない秘密の宝が隠されています。その宝とは、本格的なクラフトビールの醸造所、その名も「木内酒造」。

フクロウがトレードマークの愛らしいビールは、実は海外で最もポピュラーな日本のビール。全生産量の7割が海外へ出荷され、アメリカ・イギリス・タイ・オーストラリアをはじめとする20か国で愛されています。

今回は、茨城発のクラフトビールの魅力に迫りながら、常陸野ネストビールが世界に羽ばたくまでの物語をお伝えします。国内だけでなく海外でも認められているジャパンクオリティなクラフトビールの歴史を紐解いていきましょう。

国内外で知られる「木内酒造」の常陸野ネストビール

茨城県那珂市にある木内酒造は木造で建てられている。入口の写真
Guidoorスタッフ撮影 「木内酒造入り口」

常陸野ネストビールを製造しているのは、1823年に創業し日本酒を造り続けて190年以上の「木内酒造」です。

その木内酒造より1キロほど東には「酒井出」という地があり、その昔井戸から酒が湧き出たという伝説が残っていて元々酒とゆかりの深い場所として知られています。

そんな歴史の深い木内酒造が日本酒造りとは別で一から丹精込めてつくり上げたのが、世界でもその名が知られているクラフトビール。「常陸野ネストビール」です。

ネストの由来は酒造がある茨城県那珂市「鴻巣」で生まれたことからその名が付けられました。

酒が湧き出た伝説の地でクラフトビールづくりのはじまり

お店の目の前は道路になっていて、木造でできている
Guidoorスタッフ撮影「木内酒造外観」

木内酒造がクラフトビールづくりに乗り出したのは1994年。当時酒税法の厳しい取り決めにより、大手4社以外にビールを造ることは認められていませんでした。

日本のクラフトビールの歴史をもっと詳しく知りたい方はこちらの記事へ。

海に綺麗な夕日が沈みあたり一面はオレンジ色の光に包まれていて、幻想的な雰囲気。瓶ビールをお互いに重ね合わせて夕日に乾杯している手が2本両サイドから出ている。

酒税法の改正により小規模ブルワリーのクラフトビールづくりが活発化してきたことから、木内酒造もいよいよオリジナルのクラフトビールづくりに着手しました。

長きにわたり日本酒造りに従事してきたとはいえビールづくりに関しては右も左もわからなかったため、大手の商社・ビールメーカー等とコンタクトをとり事業計画を進めていこうと立案しました。

カナダの技術でクラフトビール事業を具現化

海外のビールバーでカウンター越しに会話をビールを飲みながらしている様子

実際に動き出してみると設備費や技術者指導料で数億円かかるということがわかりました。

このままではビール事業は無理なのでは...と諦めかけた時、ネット上でカナダのDME社というビールの醸造機械メーカーの存在を知りました。

北米では家庭でのビールづくりからマイクロブルワリーのビールづくりまで、先進国であるがゆえにノウハウをネット上で公開するなどビール事業が画期的に進んでいました。

DME社に協力してもらえば、ビールづくりが実現するかもしれない!木内酒造の面々は胸が高鳴りました。

ビール醸造用の機械

DME社と何度も何度も交渉をし、ついに大手商社の半額以下の価格で機械を購入することが実現したのです。

DME社にとっても日本で初めての取引だったため、ビールづくりのノウハウを基礎から丁寧に醸造士たちに教え、木内酒造のビール造りを後押ししてくれました。

そして1996年8月。カナダから機械が到着し、蔵の一部を改造した工場内に社員4人の力で設置されました。

本来ならば500万円ほどかかる工事費用を社員の力だけで行ったことから、彼らのクラフトビールづくりに対する情熱はたぐいまれではなかったことが伺えます。

こうして同年9月初旬、自分たちで購入し一から全て自分たちの手で整えたビール醸造の設備ができました。

目指すはジャパンクオリティなクラフトビール

女性がビールを差し出しながら青空の下で飲んでいる様子

ビール醸造所の設置と共に木内酒造はヨーロッパの本格ビールを目標に、英国産の麦芽とホップを使用したビール造りに照準を絞っていきました。

ヨーロッパを目標に掲げながらも、目指すは真似事ではなくジャパンクオリティなクラフトビール。伝統的な手法の「上面発酵(エールタイプ)」づくりをスタートさせたのです。

茨城を代表するクラフトビール「常陸野ネストビール」の完成

木のテーブルに置いてあるビアグラスに注がれるビールとカゴに入っているおつまみ。

そして構想から18か月。最初の仕込みビールがろ過され、琥珀色の美しいビール「常陸野ネストビール」が誕生しました。

同じ手法を用いても毎日微妙に変わるビールの味や香り。それらを常に五感に叩き込みその基準に合っているかどうか感覚を頼りにビール造りと向き合う醸造士たちの手によって、今も尚茨城を代表するクラフトビール「常陸野ネストビール」はつくり続けられています。

世界で認められるジャパンクオリティのクラフトビールへ

海が見えるテラス席にオリーブなどのおつまみとグラスに注がれたビールが太陽の光を浴びて輝いている様子

その後も1997年に日本初の世界ビールコンテスト「ダークエール部門」で第一位に選ばれて以来、様々なビールの賞を受賞しています。

常陸野ビールの最大の特徴は、どの醸造所よりもいち早く海外進出を果たしたというところが挙げられます。

日本でブームになる前にすでに常陸野ビールはアメリカで大人気のビールとなっていたのです。

ビールの本場ともいえる海外でジャパンクオリティなビールが人気を博しているという事実から、常陸野ビールを通して今後の日本のクラフトビールの可能性に更に期待が高まります。

木内酒造の常陸野ネストビール5つを飲み比べ

常陸野ビールの種類は今や10種類以上...

その中でも定番の商品をここではご紹介します。

万人に受ける味わい ホワイトエール

ビールが苦手な方でも飲みやすい1番人気のホワイトエール。白く濁った色と爽やかな酸味、ホップの苦みが少ないライトな味わいです。

コリアンダー・オレンジピール・ナツメグなどのスパイスの芳醇な香りが食欲を誘い、どんな料理とも相性抜群です。

スタイルベルジャンホワイトエール
アルコール度数5.5%
飲みごろ温度6~9℃

柑橘系の爽やかな味わい ペールエール

伝統的な英国スタイルで造られているためまるでオレンジのような柑橘系の爽やかなホップが特徴です。オレンジ・レモン・スミレなど清純な香りが鼻に抜けていきます。

ペールエールの良さを思いっきり味わうためにも口の広いグラスに注いで飲むことをお勧めします。

スタイルペールエール
アルコール度数5.5%
飲みごろ温度10℃

フルーティーな味わい ヴァイツェン

フルーティーな白ビールと言えばクラフトビール好きは迷わず選ぶヴァイツェン。小麦麦芽を材料に仕込んでいる酵母入りの濁りビールです。

バナナのような香りと柔らかく滑らかな口当たりは魅了される人も多い1杯です。

スタイルヘーフェヴァイツェン
アルコール度数5.5%
飲みごろ温度6~9℃

パンチ強い味わい リアルジンジャーエール

高知県産の最高級生姜を豊富に使ったジンジャービアです。かつて英国で飲まれていたという本格スパイスビール。

生姜のアクセントとアルコールをしっかりと感じられるパンチの強さに外国で根強い人気が出ています。

スタイルハーブ・スパイスビール
アルコール度数8%
飲みごろ温度13℃

香りが豊かですっきりとした味わい だいだいエール

香りが非常に強い常陸野産の「福来みかん」とオレンジ風味のアロマホップで醸造したインディアペールエール。

赤みがかった銅色は目を引き、さりげない酸味が料理の美味しさを更に引き立ててくれます。

スタイルインディアペールエール
アルコール度数6.0%
飲みごろ温度10℃

本格クラフトビールを飲みに「木内酒造」に行ってみよう!

酒蔵の蕎麦と書かれた看板がある木内酒造入り口
Guidoorスタッフ撮影「木内酒造入り口」

全国各地にある酒造ですが、意外と駅から遠かったり車でしか行けない場所だったり...

そうなると試飲ができないので買って帰るのみになってしまうことも多いのですが、木内酒造はJR「常陸鴻巣駅」から徒歩5分の距離なので思う存分お酒を楽しむことができます。(ちなみに東京都内から常陸鴻巣までは電車で2時間弱です)

クラフトビールやお酒の試飲ができるカウンター

木内酒造の試飲できるスペース。濃いブラウンのカウンターの先にお酒やグラスが見える。
Guidoorスタッフ撮影「木内酒造内装」

ビールの試飲はこのようなカウンターで320mlを500円で楽しめます。アルコール度数や常陸野ネストビールそれぞれの特徴が書かれた表もあるので自分の好みに合ったものを選べます。

また、ビールだけでなくワインや焼酎など他のお酒の試飲ももちろん可能です。

木内酒造でしか買えないクラフトビールやお酒を販売

木でできた箱にディスプレイされている木内酒造梅酒
Guidoorスタッフ撮影「木内酒造梅酒」

店内にはビールはもちろんのこと写真のような梅酒、日本酒など木内酒造でしか買えないお酒が豊富に並んでいます。お酒好きの人は目移りしてしまうほど、もはや楽園の様です。

自分のお気に入りをぜひお土産として購入して帰ってみてください。

手作りビール工房でオリジナルクラフトビールづくり

カラフルなラベルが貼られたビール瓶

茨城県那珂市にある木内酒造で醸造される常陸野ネストビールは、本格的なクラフトビールを楽しむための魅力的な場所です。(木内酒造では、最低ロット45本~オリジナルクラフトビールを造ることができます。価格は1本あたり800円です。)

ビール造りを体験する際には、まず予約をし、木内酒造のスタッフとともにビールのスタイルやアルコール度数、ホップを選んでいくことができます。

その後は各仕込み工程を共に行い、約4週間から1か月半の時間を経て、手元に自分だけのオリジナルビールが届きます。また、ラベルもオリジナルにすることができるため、世界に1つだけのビールをつくり上げる楽しさを堪能できます。

常陸野ネストビールは「ジャパンクオリティ」なクラフトビール

フローリングの上に、ボーリングのピンのように整列されている「常陸野ネストビール」のボトル
Guidoorスタッフ撮影「常陸野ネストビール」

海外でも数々の賞に輝いた、木内酒造の常陸野ネストビール。茨城はもちろん日本を代表する醸造所として、ジャパンクオリティなクラフトビールとして認められています。

木内酒造は、常陸鴻巣駅からも近いため試飲を楽しみながら、木内酒造でしか買えないクラフトビールやお酒を買うことができます。

ジャパンクオリティなクラフトビールを体験したいかたは、ぜひ足を運んで、その魅力に触れてみてください。

公式サイト:木内酒造 本店
住所:茨城県那珂市鴻巣1257
TEL:029-270-7955
営業時間:10:00~18:30 ※きき酒処は 10:00~18:00

執筆:Honami

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海に綺麗な夕日が沈みあたり一面はオレンジ色の光に包まれていて、幻想的な雰囲気。瓶ビールをお互いに重ね合わせて夕日に乾杯している手が2本両サイドから出ている。
中心に紺色の背景に白字で熊沢酒造の文字。左は夕暮れ時の湘南の海。右は瓶に入った湘南ビールがテーブルに置かれている。
中心に水色の背景に白字で富士桜高原麦酒の文字。左は青空と白い雲の中に溶け込む富士山。右はゴールドの背景にビールが注がれている様子。
中心に緑色の背景に白字で八女ブルワリーの文字。左は青空の下に広がる茶畑。右上には、瓶のクラフトビールが3本と紺色の箱。右下には瓶に注がれたビールを手に、見つめる醸造担当者。
中心にクラフトビールのイラスト。旅先で味わおう!、福岡、5選、CRAFT BEERの文字。背景は福岡の美しい夜景が広がり福岡タワーが見える。

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