日本最古の磁器「有田焼」~佐賀県有田町で焼き物文化に触れる旅~

有田焼の美と伝統が息づく、佐賀県有田町の魅力をご紹介。日本最古の磁器「有田焼」の歴史やジャパンクオリティに迫りながら、観光スポットも案内します。海外でも絶大な支持を得る焼き物の魅力を満喫し、普段の生活を豊かに彩る方法も発見。佐賀県で美しい焼き物との素敵な出会いを体感してください。
器の側面には様々な模様が描いてある。
IORIさんによる写真ACからの写真

佐賀県の西部に広がる有田町は、日本が誇る美しく艶やかで繊細なジャパンクオリティの象徴として知られる「有田焼」が400年以上にわたり育まれた土地です。
この記事では、日本最古の磁器である有田焼の歴史と魅力に迫りながら、有田町の観光情報も交えてご紹介いたします。

有田焼のルーツを探り、その美しさと伝統的な技術を堪能すると共に、有田町が息づく風光明媚な風景と歴史を感じる観光スポットもご案内いたします。
また、佐賀県名物である「有田焼」と「伊万里焼」の違いや、有田焼と欧州の磁器文化との関係にも迫ります。

この旅を通じて、有田焼の魅力に触れると共に、心温まる焼き物文化を存分に味わっていただければ幸いです。
さあ、美と伝統が息づく有田焼の世界へ、心躍る旅に出かけましょう。

(※この記事は更新し、2023年12月25日に再公開しました。)

日本最古の磁器「有田焼」の歴史と魅力

急須や湯飲みには青色の模様が入っている。
ケイちゃんさんによる写真ACからの写真

有田焼の発祥は17世紀初め。

当時の日本では茶の湯が大流行し、千利休をはじめとする茶人たちは朝鮮の高麗茶碗を扱いながら茶の文化を嗜んでいました。

そんな茶碗を生み出している朝鮮という国に興味を持ったのは、皆さんもよくご存知の豊臣秀吉です。

鍋島直茂の肖像画。
鍋島直茂

そしてこの秀吉の朝鮮出兵の撤退の際に、佐賀藩主の鍋島直茂は、何千という数の朝鮮陶工を日本へ連れていきました。

そのうちの一人、李参平(和名:金ケ江三兵衛)がこの有田の地で日本初の磁器を生み出した人物です。

参平は当初佐賀の中央部多久(現在の多久市)にて磁器づくりに励んでいましたが納得のいくものはできず、もっと適した材料を見つけ出すべく各地を転々と旅しました。

白っぽい色のカオリナイトが2つ並んでいる写真。
カオリナイト

そして1610年、有田の泉山にて良質なカオリン石(カオリナイト:磁器の元となる鉱物)を発掘します。

その後参平は6年の歳月をかけ、日本で初めての磁器の生産を成功させたのです。

ちなみに混同しやすい方も多いと思うので一言補足説明をしておくと、陶器=土もの・磁器=石ものという見解で、有田焼は石が原料となっている磁器に分類されます。

白ベースに水色で模様が描かれた鳩の形をした箸置き。
ねほえさんによる写真ACからの写真

初期の有田焼は白い素地に藍色一色のシンプルで素朴なデザイン多かったのですが、初代柿右衛門赤絵技術の成功により新しいスタイルの柿右衛門様式が確立されていきます。

元々赤の発色がとても難しいと言われていた中で、柿右衛門は庭の柿の実のように赤い色を生み出したいと試行錯誤を繰り返した結果美しい赤の発色にたどり着いたそうです。

こうして有田焼は日本全国だけでなく、世界各国にも影響を与えていくこととなり、日本を代表する磁器としての地位を築いていきました。

ジャパンクオリティ溢れる有田焼の特徴と美しさ

赤や青や黄で模様が描かれた茶碗が沢山並んでいる写真。
写真提供:九州観光推進機構

有田焼の特徴でまず目に映るのは、透き通るような白さの素地に鮮やかな絵付けが織りなす美しいデザインではないでしょうか。

この真っ白な素地は天然陶石ならではであり、かつてオランダ連合東インド会社の厳しい要求に応えようとして実現したものだそうです。

ロウが垂れたようなデザインの陶器。
写真提供:九州観光推進機構

また一見薄く、軽く繊細な造りに見える有田焼ですが、磁器特有の固く丈夫な性質を持っているため、日常に使う食器としても最適です。

磁器は1300℃の高温で焼き上げ、鉱物に近い硬さになろうとするため、優れた強度となり叩くと金属音が鳴ります。

しっかりとした耐久性がありながらも、きめ細やかでツルっと滑らかな手触りが楽しめるのも有田焼の魅力の一つとなっています。

徳利とおちょこにフォーカスを合わせて、奥にはそれを作っている人が写っている。
写真提供:九州観光推進機構

もう一つ大きな特徴として有田焼は分業制の製作工程を取っています。

成型から絵付け、焼きに至るまでそれぞれの技術者たちが集結して一連の流れをつくることで天下一品の磁器が仕上がるのです。

有田焼の三つの様式

1.古伊万里様式

主に海外輸出用につくられ一級品として扱われていたもの。濃い藍色の染付金襴手(きんらんで)と呼ばれる赤や金色が彩られた織物のような豪華絢爛な模様が特徴。

2.鍋島藩窯様式

17~19世紀に国内の献上品として鍋島藩直営の窯でつくられたもの。青みがかった地肌やくし高台、裏文様に特徴があり、規則正しい決まりごとの中で構図も絵付けも非常にレベルが高く完璧な美を追求しているのが特徴。

3.柿右衛門(初期色絵)様式

前述した人間国宝の柿右衛門が生み出したもの。濁手(にごして)と呼ばれる透明感がありながら温かみのある乳白色の地に余白を十分に残しながら色鮮やかな赤をはじめとする色で花鳥風月がデザインされているのが特徴。「余白の美」と言われている。

佐賀県名物「有田焼」と「伊万里焼」の違いと魅力

木の花が咲いている絵が描かれている伊万里焼。
写真提供:九州観光推進機構

佐賀県の焼き物といえば「有田焼」ともう一つ「伊万里焼」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

この二つ一体何が違うのか、筆者も今回有田焼を取り上げるまで恥ずかしながら知りませんでした。

答えはズバリ…有田焼も伊万里焼も同じものなのです!!

そもそもこの2つは、江戸時代には区別がなく「肥後焼」という名前で呼ばれていました。

伊万里焼に職人が筆で模様を書いている様子。
写真提供:九州観光推進機構

これらが分けて呼ばれるようになったのには流通経路に要因があります。

それぞれ土地名が付いているのは名前を見ておわかりかと思いますが、有田は山の盆地で陸路での流通が主だったのに対し、伊万里は海に面しているので海路で流通していました。

海路の方がより多くの焼き物を輸出できることから、伊万里から出荷しているものの中には有田でつくられたものも数多くありました。

伊万里焼で出来た風鈴が沢山吊るされている様子。
写真提供:九州観光推進機構

つまり伊万里港から出荷された焼き物の中には有田で焼かれたものも伊万里で焼かれたものもあり、有田からは有田で焼かれたもののみが出荷されていたということになります。

また伊万里港からは海外への輸出も多かった為、ヨーロッパなど当時の日本の磁器を輸入していた国々からは出荷された港の名前を取って「IMARI」という名前で知られることとなり、有田焼という言葉よりも伊万里焼という言葉の方が外国では馴染みのあるものとなっていったのです。

有田焼のコーヒーカップ高級感溢れる模様が赤・青・黄・緑など様々な色を使用して描かれている。
シェルさんによる写真ACからの写真

また今でも呼び名をあえて分けているのは、有田焼は高級品から生活用品を幅広く生産しているのに対し、伊万里焼は鍋島藩窯様式の流れを汲み高級磁器の生産が主なためです。

作られている場所や出荷場所が違い、目的がそれぞれ発展していくうちに枝分かれしていきましたが、有田焼と伊万里焼は元々同じものであるということがわかるとまた面白いですよね。

有田焼(伊万里焼)とマイセンの関係と影響

青空の下に存在するレンガ調の建物の写真。
原ヘッタリーナさんによる写真ACからの写真

有田焼(ここでは伊万里港から輸出されていた伊万里焼の意)は海外で一時期大ブームを巻き起こします。

東洋の純白で薄いのに丈夫な艶のある磁器は「白い黄金」とまで言われ、今までこのような磁器を見たことなかったヨーロッパの王侯貴族たちを中心に次々と買い集められていきます。

中でも古伊万里の溺愛コレクターとして名前が知られているのがドイツのザクセン選帝侯アウグスト強王です。

マイセンのテーブルには数々の食器や果物がきれいに並べられている様子。
マイセンのテーブルウェア

彼は古伊万里を手に入れるために自分の兵を売り払ったとまで言われていますが、コレクションの数は数万点にも及び、たった一人で膨大な古伊万里コレクションを築き上げていきました。

アウグスト強王はコレクションに留まらず、この技術をヨーロッパでも実現したいと考え、錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーに磁器製法を研究させました。

オレンジの花が描かれた同じデザインの食器が置いてある。
参照:ODAN

こうして1710年にヨーロッパ初の硬質磁器窯「マイセン」が誕生したのです。

現在でもドイツのマイセン磁器といえば高級磁器として日本でもよく知られていますが、これらが日本の有田焼(伊万里焼)の影響を受けていたことは日本の誇りですよね。

有田町の歴史を感じる観光スポットと有田焼の融合

佐賀県有田町には有田焼にまつわる観光スポットが数多くあります。

実際に本場の有田焼に触れながら、旅を通して400年の歴史を感じてみませんか。

有田焼のテーマパーク「有田ポーセリンパーク」

有田ポーセリンパークの外観。宮殿のように横に広がった造り。
写真提供:九州観光推進機構

まずご案内するのは有田焼のテーマパーク「有田ポーセリンパーク」。(ポーセリンとは磁器を表します。)

ここ本当に佐賀県ですか?と疑いたくなる壮大なヨーロッパ風の建物が突如現れるので皆さんも驚きを隠せないかと思います。

有田ポーセリンパークの天井のデザインも全てツヴィンガー宮殿を如実に再現している。
写真提供:九州観光推進機構

それもそのはずこの建物は18世紀初頭のドイツ・バロック建築の華といわれたツヴィンガー宮殿を如実に再現したものなのです。

このツヴィンガー宮殿は有田焼(伊万里焼)の世界的コレクターでドイツマイセン磁器の開発に大きな功績を残したアウグスト強王が建築したものです。

ツヴィンガー宮殿を再現してつくられた有田ポーセリンパーク。
手前にはヴィーナスの像が花に囲まれて立っている。
写真提供:九州観光推進機構

そんな有田焼とゆかりのある人物に関係する宮殿だからこそ、この有田町の磁器のテーマパークに再現する必要性があったのではないでしょうか。

細部まで緻密につくられているので、ぜひ本場ドイツの宮殿といつか見比べることができたら良いですよね。

宮殿を囲むオレンジや赤やピンク色の花々が植えられているバロック庭園の様子。
写真提供:九州観光推進機構

また宮殿を囲むバロック庭園の四季折々の花々も実に見事です。

広大な庭はヨーロッパの美しいスタイルをそのままに、手入れがしっかりと行き届いていて優雅な散歩を楽しむことができます。

有田ポーセリンパークに有田焼(壺)が数点展示されている。
写真提供:九州観光推進機構

また館内は400年の歴史の中でも特に重要な幕末から明治期にかけての有田焼を中心に、それぞれの様式の違いを間近で見ることの出来る貴重な展示の数々がなされています。

中でも1870年代にウィーン万博に展示された大花瓶はその大きさ182㎝で存在感と高貴な美しさに息をのむことと思います。

有田ポーセリンパーク

住所:佐賀県西松浦郡有田町戸矢乙340番地28
TEL:0955-41-0030
営業時間:平日9:00~17:00・土日祝10:00~17:00
入場料金:無料
有田ポーセリンパーク

江戸時代から建てられている「トンバイ塀」のある裏通りを散策

トンバイの塀が並ぶ裏通りの様子。
写真提供:九州観光推進機構

有田町を歩いて観光していると、ふと目に入るのが赤茶色の塀が続く街並みです。

登窯の内壁に使われた耐火レンガ(トンバイ)の廃材を赤土で固めたこの「トンバイ塀」は、江戸時代から建てられています。

廃材を赤土で固めてあるトンバイ塀。上には瓦のようなものもついている。
kikitanさんによる写真ACからの写真

かつては川沿いに多く窯元が立ち並び、その窯元を囲むようにトンバイ塀が建てられていました。

この塀は陶工たちの技術の漏洩を防ぐ意味もあったようです。

木椅子や台が並ぶ有田焼工房の様子。
写真提供:九州観光推進機構

せっかくこのような焼き物の町を訪れたからには、有田焼づくりに挑戦してみるのもおすすめです。

有田焼工房でろくろや絵付けなどを体験し、自分だけのオリジナルの有田焼を旅の思い出にぜひ作ってみてください。

有田焼工房(有田ポーセリンパーク)

住所:佐賀県西松浦郡有田町戸矢乙340-28
TEL: 0955-41-0030
営業時間:平日10:00~16:00 ・土日祝10:00~17:00
料金:HP参照
公式WEB:有田焼工房

全てが磁器でできている!陶山神社の神秘的な雰囲気

陶器でできた灯篭。
photopictureさんによる写真ACからの写真

有田焼の魅力を後世に伝え続ける場所として人々に親しまれているのが「陶山神社」です。

1658年頃に建立され応仁天皇を主神とし、有田焼の生みの親である李参平(金ヶ江三兵衛)が祀られています。

陶器でできた白っぽい狛犬。
みどりのタヌキさんによる写真ACからの写真

陶山神社でしか見られない光景の一つとして、境内にある全てのものが磁器でできていることが挙げられます。

大鳥居や狛犬、大水瓶に至るまで有田焼の街ならではの白磁に青い色合いが神社の厳かな雰囲気をより神秘的に魅せています。

陶山神社

住所:佐賀県西松浦郡有田町大樽2-5-1
TEL:0955-42-3310

美しい有田焼で彩られた佐賀県有田町の魅力

有田焼の上に焼かれたいわしが3匹乗っている。
cheetahさんによる写真ACからの写真

有田焼の魅力と佐賀県有田町の魅力が皆さんに伝わったでしょうか。
ジャパンクオリティな焼き物は日本国内だけでなく海外でも絶大な支持を得ています。

日常の器を日本独自の逸品に変えるだけで、生活が一層豊かになることでしょう。
是非、佐賀県で美しい焼き物との素敵な出会いを体感してください。

執筆:Honami

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